井上一馬『ケネディ』の中のロバート
最後に書いてから、はや二カ月。
どんどん更新が間遠くなって、なにやら風前の灯と化しつつあるこのブログであります。
が、なるべくまた書いていきたいなと思っております。
なかなかボビー関連本を読み進む余裕がない昨今で、それが更新が遅くなる原因の一つです。
英語の本を読む余裕ないなあ…と思っていたとき、ふと目に留まったのが、井上一馬の『ケネディ』。
あとがきには、これまで書かれてきた数多くのケネディに関する本は、大半が、ケネディを絶賛するが、否定するかのどちらかの極に偏っており、どちらの側にたつにせよ、著者の主観がたっぷりと入りこんでいる、だから、成るべく客観的な観点に立って、書いて見ようと思ったという趣旨のことが書かれてあり、おお、これはいいと思って、読んでみた次第です。
- 作者: 井上一馬
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1994/05
- メディア: 新書
- クリック: 1回
- この商品を含むブログを見る
表紙が出ませんが、表紙にはちゃんとRFKも描かれています。(だから手に取ったわけですが。)
JFKについての本なので、案の定、あまりボビーは出てきませんでしたが、いくつか登場した部分から、引用します。
(読みやすくするため、適当に改行しています。)
…ケネディの選挙参謀だったロバートは、ジョンソンを好いていなかった。
ロバートは、ジョンソンを南部の保守的な人物だと見なしていたし、民主党の大統領候補者の指名を争っていた段階で、ジョンソンが彼らの父親であるジョゼス・ケネディを誹謗したことも根にもっていた。
ジョンソンは、ジョゼフがチェンバレンに肩入れしていたことをふたたび持ち出して、「私のおやじはチェンバレンの鞄持ちなどしなかったからね」といったのだ。ロバートはこのことをけっして忘れなかった。(166p)
ま、これは有名な話ですが。
両者間の対立を主題にした本まで書かれているし。
それにしても、ボビーは本当にこれを根にもちましたよね。
家族思いという長所が、身内の侮辱を決して許さないという短所に転じてしまうのだなあ。
下は、これまた有名なホッファとの確執。
ロバートは、ケネディ兄弟のなかでは、姉のユーニスとともに、敬虔なカトリック教徒である母親のローズの性格をもっともよく受け継ぎ、正義感がことのほか強かった。
そんなロバートにはホッファのような人間は絶対に許せなかった。そしてロバートは、マフィアとのつながりがあるとされたホッファの追求に、まさに水を得た魚のようにのめり込んでいった。(187p)
ホッファのほうはロバートを暗殺することさえ考えていた。彼はワシントンのオフィスで側近にこう漏らしていた。
「ケネディには消えてもらわなければならん。あのクソ野郎を誰かが始末する必要がある。俺はあいつの弱みを握っているんだ。あいつはオープンカーに乗って自分で泳ぐことになるのさ。俺は超望遠レンズのついた・二七〇ライフルを持っているが、こいつで狙えば百発百中だ。それなら簡単だよ。だが、俺は用心深いし、そんな手を使ったらヤバイからな。」(189p)
ホッファとボビー。なにせ、ボビーの「初恋の人」ですからね(^_^;)。
さらに、マリリン・モンローとの関係については:
(引用者注:ピーター・ロ―フォードは、ボビーとマリリンの間に情事が頻繁にあったと語るが)しかし、ロ―フォードの話もまたそのまま信じることはできない。
なぜなら、いっぽうそれと真っ向から対立する証言も存在するからだ。ロバートの報道担当秘書だったエド・ガスマンは、ロバートがマリリンと会ったのは、せいぜい四・五回ていどだったといっているし、フーバー長官のもとでFBIのナンバー3だったウィリアム・サリバンは、「フーバーはロバート・ケネディの弱みを握ろうとして懸命になっていたが、つに果たせなかった」といっている。
「マリリン・モンローとの噂が流されたことがあったが、ただの作り話にすぎない。噂の出所は、過去にも途方もない話をでっち上げた前歴をもつ、自称ジャーナリストの狂信的な右翼である。
だが、フーバーは大はしゃぎで煽りたてたため、噂は野火のように燃え広がった」
ロバート・ケネディの個人秘書だったアンジー・ノヴェロはこう語っている。
「彼はとても思いやりがあって助けを必要としている人を黙って見過ごせない性格でしたから、マリリンの悩みも察知していたと思います。彼は聞き上手で、マリリンにすればいちばんうれしかったのでしょう」ノヴェロの話では、ロバートは歌手のジュディ・ガーランドとも親しくしていたという。
たしかにロバートには、思いやりがあった。兄の死後、上院議員になったロバートは、一九六七年、アイダホ州のフォートホールの悲惨なインディアン保留地を訪ねたが、このときフォートホールのインディアンは同行した記者にこう語っている。
「多くの白人がワシントンからやってきては驚いていたが、彼らの涙はワニの空涙だった。だが、ケネディ上院議院の涙は本物だった」(217〜218pp)
以前、グロリア・スタイナムの『マリリン』を読んだ時、やはりボビーとマリリンの関係はあったと考えるべきなのか…と思いましたが、こうなるとまた振り出しに戻るで、真相は藪の中、ですねえ。
ちなみに、W・サリバンの文章は、彼の自伝 The Bureau: My Thirty Years in Hoover's FBI (1979) からのものですね。
The Bureau: My Thirty Years in Hoover's FBI
- 作者: William C Sullivan,Sam Sloan,Bill Brown
- 出版社/メーカー: Ishi Press
- 発売日: 2011/06/07
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログ (1件) を見る
ボビーが精神的に不安定だったジュディ・ガーランドを自宅に招いて支えたという話を、ガーランドの伝記で読んだような記憶があるのですが、ちょっと自信なし。
いつか、確認しておきます。
有名なJFKの誕生日に「Happy birthday」を歌った後の写真でしょうな。