クラークによるRFK(2)

 仕事が押している関係上、これからしばらく更新できなくなると思います。
 
 と言いつつ、読み終わっておかないと気になって仕事が進まないであろうという口実のもと、クラークさんの本を昨夜遅くに読み切った私。(ホントに仕事する気あるのか?)


 

The Last Campaign: Robert F. Kennedy and 82 Days That Inspired America

The Last Campaign: Robert F. Kennedy and 82 Days That Inspired America


 この本、旅のお供本として読み始めたのですが、ボビーの遺体を載せた列車にまつわるプロローグが非常に感情を揺さぶる書き方でして、不覚にも電車の中で鼻をぐずつかせ、涙を拭き拭き読んでしまいました。外から見ると不気味なおばさんだったでありましょう。すみませんね。



 キング牧師暗殺の1968年4月4日から5日にかけて扱っている第5章から。

 キング牧師の死についての有名なスピーチをした後、マロットホテルに戻ったRFK。

 ジョン・ルイスはマロットに着いてすぐに「ケネディはベッドに倒れこみ、うつぶせに横たわり、そして声をあげて泣いた」ことを思い出した。「たくさんの人が泣いていた」と彼はつけ加えたが。その夜もっと後に、ケネディはジョーン・バーデンの前でまた泣いた。彼は彼女の部屋の入り口に立ち、何秒間か黙って彼女を見つめた後、こう言った。「私だったかもしれない。」(マーティン・ルーサー・キングJrはJFKが暗殺されたと聞いたとき、「これは私にも起こるだろうことだ。ここはそういう病んだ社会だ。」と妻に語った。)
 それから、彼は彼女を両腕で抱くようにしてベッドに引っ張って行き、そこで一緒に横になり、二人は泣いた。

 彼のタフガイイメージにも拘わらず、ケネディはすぐに泣いた。1964年には、彼は兄のために涙を流した。しかし、それから後、彼は他者のために泣くようになった、ブラジル東北部のスラムやニューヨーク州北部の移民労働者のキャンプを歩いて通った後打ちのめされて、ミシシッピで飢えている子供たちを見て、彼がインディアン特別居住区を見学している間に、そこに住む一人のインディアンの子供が飢え死にしたと知って。

 しかし4月4日に、ケネディは誰のために泣いたのか。キングのためか?コレッタ・スコット・キングと彼女の子供たち―ジャッキー、キャロライン、ジョン・ケネディJr がそうだったように苦しむであろうと想像できた者たちのためか?アメリカのためか?彼の殺された兄のためか?それとも、彼自身のためか?―「ジョーン、私だったかもしれない。」 
(99〜100pp)


 選挙戦の間、JFKの影から決別していったボビー。

 以下は、スタッフの一人、ジム・トーランとのやりとり。

 トーランはケネディがこの選挙運動の間に、カタルシスを経験したのだと信じている。当初、(RFKは)群集たちが歓声をあげているのは、自分の兄がしたことのためなのか、それとも自分がすると約束していることのためなのかを見定めるのに苦労していた。しかし、ついに彼らは自分のためにそこにいるのだと思い定めた。 

 トーランにとって、これをはっきりさせる瞬間は、3月26日に来た。それは、彼とケネディワシントン大学のキャンパスを講堂へと向かっていた時だった。突然、二人の後をついて来ていた群集の中から一人の男が近寄ってきて、ケネディのPT109のネクタイピンをむしり取ると、走り去った。

 1965年の秋にケネディとトーランがブロンクス民主党から出ていた市長候補者の応援をしていたとき、男の子がケネディのPT109のネクタイピンを取ろうとした。彼はその子の手をガシッと掴むと、子供の目を覗き込みながら優しい声で言った。「お願いだから、これは取らないでくれるかな。僕の兄さんがくれたものなんだ。」その後、彼はオリジナルのピンをはずしてコピーのものを身につけるようになり、動くときは替えが入った箱を携えた。群集のためにピンを失ったら替えのものをつけるためだった。

 しかし、シアトルでの、その午後の時点でケネディは自分のスペアのネクタイピンをホテルの部屋に置いてきていた。彼とトーランが講堂へのドアに着いたとき、トーランに彼のPT109のピンを借りられるかと尋ねた。
 「それは出来ません、ボビー」とトーランは言った。
 ケネディは戸惑った表情を見せた。結局トーランは言った。「いいですよ、お貸しします。でも、返して欲しいんです。」
 ケネディはちょっとの間、彼をぽかんと見詰めていた。ようやく微笑が彼の顔に浮かび、こう言った「そうか、分かったぞ。それは兄がくれたものなんだ、そうだろ?」
 「違いますよ、ボビー」とトーランは返事した。効果を挙げるためにちょっと間を置いてから「あなたがくれたんです。」
 ケネディはゆっくりと何度か頷いた。そして微笑は満面の笑みとなった。(66〜67pp)

 この話、好きだなあ。トーランさんはいい人だ。



 では、しばらく御機嫌よう。