カンザス州立大学でのRFK

 先日のThe Last Campaign の抜粋から、更に引用します。

 私はPBS製作のTV番組RFK のビデオを観て以来、ボビーの選挙戦が始まったカンザス州立大学での講演について、RFKは自信をもって臨んだような印象を抱いていました。

※RFKの中のカンザス大学についての箇所はこちらをどうぞ。



 ところが、今回 Vanity Fair に掲載された Thurston Clarke の文章を読んでびっくり、内実は全然異なるものでした。

 そもそも3月17日に選挙戦に参入したRFKが、翌日、カンザスから彼の予備選挙戦が始めたのは偶然がなせる業で、選挙に出るかどうか確定する前からこれは決まっていた予定だったからに過ぎませんでした。

 カンザスは大統領選挙の際に、滅多に民主党候補に投票しない州で、およそ民主党候補が選挙戦を開始するのにふさわしい州とは言い難いものでした。

 したがって、RFKも選挙戦スタッフも、カンザスでの講演に対し非常に緊張しており、カンザスに向かう飛行機の中はピリピリした雰囲気でした。カンザスでこけたら、選挙戦に入ると同時に撤退になりかねないという不安が渦巻いていたのです。

 その緊張と不安は、家の用事でRFKとは別に後からカンザスに向かった妻のエセルにもあり、彼女は機内で、同行した友人に「カンザスの人たちは彼にブーイングを浴びせるかしら」「あの人たちはボビーを嫌うかしら」「彼らは彼を殺すかしら」と言っていたそうです。

 ところで、RFKが殺されるのではないかという不安はRFKの周りの人びとの中に当初から強くあり、彼等はしばしばその恐れを口にしていたということを、今回改めてはっきりと認識して、そうだったんだ!と思った次第。


 さて、カンザス州立大学でいよいよ講演となり、壇上に上ったRFKですが。(ここから、文字通りの拙訳。誤訳があると思います…。)

 ケネディその人が非常に神経質で脆く壊れそうに(vulnerable)見えたので、ワッシュバーン大学の近くにある「ケネディを大統領に」クラブ代表のジム・スラッタリー(Jim Slattery)は、突然、壇上に昇ってケネディを抱きしめたいという衝動に駆られた。彼は考えた。頑張って、頑張って!あなたは私が頼りにしている人なんですよ!(Come on! Come on! You're my guy!なんですがうまく訳せません、すみません。)

 ケネディが話し始めたとき、彼の声はしわがれ、ステージの近くにいた人びとは、彼のぶるぶる震える手と、震えている右足に気がついた。


 (中略。その後、次第にRFKは調子を取り戻していく。)


 ケネディはジョンソン大統領のベトナム戦争批判を、告白と謝罪から始めた。「この話を、個人的および公的双方にかかる見解で始めさせてください」と彼は語った。「私はベトナムに関する多くの決定、現在私たちがいる道筋にいたるようにさせた決定に関与しました。」

 彼は、努力は「最初から呪われた」ものだったのかもしれないとはっきりと認め、自分の兄の政権が支えた南ベトナム政権は「腐敗と非効率と強欲によってすっかり堕落」していたことを認めた。
 「もしそれが事実で、いやその通りなのですから、それならば、私は喜んで歴史と皆さん市民の前で、自分の責任の分を負います。しかし、過去の過ちはそれ自身が犯したことに対する言い訳ではありません。悲劇は生きている者にとって知恵を獲得する道具です。・・・

(中略。ソフォクレスを引用して)

「あらゆる人は過ちを犯す。しかし、善き人は自らの進む道が誤っていることを知ったときにそれを認める。そして、その人は悪を正す。」
「唯一の罪は」と彼(RFK)は述べた。「プライドです。」

 ケネディの謝罪は、これまでで最も盛大な歓声を引き出した。たぶんそれは、学生たちは大人が過ちを認めるのを耳にして嬉しかったからであろうし、あるいは学生たちもかつて戦争を支持していたので、ケネディの「これ、我が過ちなり」(罪の告白)は自分たちもまた間違っていたということを認めやすくしたからであろう。


 ハルバースタムが指摘していたRFKの稀有な特質、つまり自分の誤りを率直に認める能力がここに遺憾なく威力を発揮し、しかも彼のこうした態度は聴衆自身の誤りをも内省させることが出来るのだなあと感銘を受けました。

 これはすごく大事な姿勢ですね。


 この後、RFKの講演に対し学生たちは熱狂的に拍手し叫び応答して、大変盛り上がります。

 

 タイム誌のヘイズ・ゴレィ(Hays Gorey)は、ケネディカンザス州立大学(K.S.U)の学生たちの間に流れた電流を「本物で稀なもの」と呼び、さらに言った。「もちろん、こうした素晴らしいものはジョン・F・ケネディも持っていた、しかしジョン・ケネディ…自身はこれほど情熱的ではあり得なかったし、こうした火花を起こすことも出来なかった。」

 ケヴィン・ロチェット(Kevin Rochat)はもう少しで泣き出しそうだった。なぜならケネディがとても直裁的で正直だったからだ。彼は自分に言い続けていた「なんてことだ!彼はまさしく僕が考えていた通りのことを語っている!」

 後にカンザスから議会に当選することになるジム・スラッタリーは、第二次イラク戦争の際にK.S.Uでのケネディの演説を読み直し、それは非常に力強い「なぜならケネディは何が正しいのかについて語っていたからだ」と結論を出した。

 今こそ、RFKですよ。私もこの時の演説原稿を読み直してみようと思いました。
 
http://www.jfklibrary.org/Historical+Resources/Archives/Reference+Desk/Speeches/RFK/RFKSpeech68Mar18UKansas.htm

 これはK.S.Uの後、午後に演説したカンザス大学での原稿ですが。

 こういう記事もあります。 

FindArticles.com | CBSi
 

この写真はカンザス州立大学で講演しているRFKを撮ったもの。集まった学生の熱気が伝わってくるようです。