ハルバースタムによるRFK
とうとう読み終わりました、The Unfinished Odyssey of Robert Kennedy。
やはりこういう本は、心に余裕のあるときに腰を据えて一気に読まないといけませんね。(というより、仕事がきつくて心の振り子が逆方向に振れたというところか。読まないではいられないという感じでしたわ。)
Unfinished Odyssey of Robert Kennedy
- 作者: David Halberstam
- 出版社/メーカー: Barrie & Jenkins
- 発売日: 1970/02/26
- メディア: ハードカバー
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なんとなくゴタゴタして読みにくい気がするけど、私の英語力のせいだろうなあと思いながら読んでいたら、いきなり111ページ目の余白部分に前の所有者と思しき人の手による書き込みを発見。
「This book is poorly written and/or poorly edited.」と書かれていました。
そ、そうなのか……?
この本はRFKが暗殺された年に刊行されているので、数ヶ月でハルバースタムは書き上げたことになるわけで、そのせいもあってちょっと水準が落ちているのかもしれない。
確かに『ベスト&ブライテスト』や『覇者の驕り』のような作品には比べられない。まだ若書きという印象を受けます。
それでも、機知と皮肉に富んだ寸評、適格なエピソードと発言の選択など、ハルバースタムらしいところがあちこちに出てきて、結構楽しめました。
一番可笑しかったのは、ジーン・マッカーシーとオレゴンに対する以下の評。(拙訳)
彼(マッカーシー)は選挙活動を自分のスタイルで実によくやってきた。そして、彼は今やここオレゴンにいた。オレゴンは彼にまさにあつらえたようにぴったりだった。もしもマッカーシーこの世になかりせば、オレゴンが彼を発明していたことであろう。(176p)
ハルバースタムは反RFKを打ち出していた『ニューヨーク・タイムズ』の記者だったのにRFK支持だったようで、ハンフリーやマッカーシー評の切っ先の鋭いこと、『ベスト&ブライテスト』で堪能できるハルバースタム節を十分味わえます。
ロバート・ケネディは、もし相手が小さかったらその鼻に一発お見舞いするような、タフでチビのアイルランド野郎だった。その一方、ジーン・マッカーシーはといえば、素敵で礼儀正しい国語の教師だった。「ええ、ゴールドバーグ夫人、あなたのお子さんは本当にいいエッセイをお書きになりますよ。」(174p)
そして、鋭い分析と深い洞察もあちこちで見受けられます。
「彼(RFK)とハンフリーの間の大きな違いは」と選挙戦のさなかに彼の友人の一人は言った。「ハンフリーは、1948年に体制の外から始めてゆっくりと着実にその中に入り込んでいき、1968年には体制側の公的な代表者となるまで一歩一歩進んでいった。
(中略)
さて一方ケネディは、権力の真っ只中から始めた。でも、あの事件によって体制側から放り出され、それでアメリカ社会を外側から見るようになった。
二人の違いはこうなんだ。一人は1948年に外側にいた。もう一人は1967年に外側にいた。それは視界がとてつもなく違うことを意味している。」(158p)
『ベスト&ブライテスト』で見られたRFK評(自分の誤りを率直に認める等)は既にこの本に登場しており、この本の延長線上に傑作『ベスト&ブライテスト』があるのが分かります。
私は、ハルバースタムは、この本を書いたからこそあの本が書けたという印象を受けました。
※これが、ハルバースタムのRFK本の表紙に使われている写真です。Omniphoto.comからのものです。